雪の結晶の写真をどんどん拡大していくところを想像してみてください。ふつうの図形なら、拡大するほど単純に見えてきます。ところがある種の図形では、どこまで拡大しても同じくらい複雑な形が次々にあらわれます。小さな一部分を取り出して拡大すると、その部分が全体の形とそっくりなのです。この性質を自己相似といい、この性質をもつ図形をフラクタルといいます。
いちばん有名なフラクタルのひとつがコッホ雪片です。つくり方はとても簡単です。正三角形から始めて、すべての辺の真ん中の3分の1を、とがった三角形の出っぱりに置きかえます。そして、新しくできた図形のすべての辺に対して、まったく同じ操作をもう一度くり返します。これを1回行うたびに、辺の数は4倍になります。最初はたった3本の辺ですが、数回くり返すだけで、辺が何千本、何万本もある精巧な雪の結晶の形ができあがります。
ここで本当に不思議なことが起こります。くり返すたびに周の長さは4/3倍ずつ増えていくので、無限にくり返すと周の長さは無限大になります!では、雪片が占める面積はどうでしょう?面積は、もとの三角形を囲む円より大きくなることはないので、どうやってもある値をこえて大きくなることはありません。無限に長い線が、有限の面積の中にすっぽりおさまってしまうのです。直感的には不思議ですが、数学的にきちんと証明できる事実です。
もうひとつの有名なフラクタルがシェルピンスキーの三角形です。正三角形をかき、3辺の中点を結んで真ん中に小さな三角形をつくり、その真ん中の三角形をくりぬいて取り除きます。そして、残った3つの小さな三角形それぞれに、まったく同じ操作をもう一度くり返します。これを続けると、残る三角形の数は毎回3倍になり、全体の面積はそのたびに4分の3に縮んで、どんどん0に近づいていきます。それなのに、完全には消えてしまわない不思議な形があらわれるのです。
フラクタルは、数学者が頭の中だけで考え出したものではありません。木の枝の広がり方、稲妻の形、山の尾根、血管や肺の中の気管支の枝分かれ、ギザギザした海岸線の形。どれも驚くほどフラクタルに近い形をしています。実際、フラクタルという概念に名前をつけて広めたのは、「海岸線の長さは本当はどれくらいなのか?」という問いを立てた数学者ブノワ・マンデルブロでした。そのアイデアは、海岸線の長さが、どれだけ細かい物差しで測るかによって変わり続けるという事実から生まれたのです。
体験ページでは、スライダーで深さを1段階ずつ増やしながら、コッホ雪片の辺が何本まで増えるのか、シェルピンスキーの三角形がどこまで細かく分かれていくのかを自分で確かめられます。同じ規則をくり返すだけで、形がどれほど複雑になるのかを自分の目で見てみましょう。